アイドル瀬名泉のファンでした。

 

 

 

 


※泉くんの夢を素直に応援できない私が悪いのは重々承知しているのですが、どうしても耐えきれなくなったので吐き出させてください。

 

 

 

 

 

 

 泉くんを好きになってからのこの2年間、現場にはほとんど全部通ってきた。もちろん公開されているドリフェスだけだから、非公開のドリフェスのことは分からない。ネットの情報とか、普通科に通ってる友人の友人から教えてもらってそれなりに把握はしていたけど、この目で見てきたわけじゃない。
 だから泉くんの全部を見てきたとは到底言えないと思う。それでも、私は瀬名泉という人間を知っていると思っていた。

 

 

 私が泉くんに降りた頃、Knightsは2人だった。泉くんとれおくんの2人だ。今思えばこの時代のことは彼らにとっても幸せな記憶ではないのだと思う。積極的に語ろうとしないことからも何となく察してる。けれど私は、あの頃の泉くんなら世界を変えられるんじゃないかって本気で信じてた。
 正直それまでの夢ノ咲出身アイドルって言っちゃ悪いけどパッとしないし、すぐ不祥事とか起こして辞めちゃうしで印象最悪だった。現役の夢ノ咲生だってどうせチャラチャラ遊んでるだけだろうなあって。
 けど、初めて見た泉くんはとにかく一生懸命だった。キラキラしてた。ああ、この人こそがアイドルなんだって思ったし、この人なら、アイドルを変えてくれるって本気で思った。


 それまでも友人の付き添いで夢ノ咲のライブは何度か行ってたし、チェスも知ってたんだけど、当時のチェスってほんっとやる気ないのこっちにも伝わってくる感じだった。だから、泉くんが踊ってるときに指先がピンと伸びてるっていうただそれだけのことにありえないくらい感動してしまって……(笑)
 私が本気で大好きなアイドルってものを、泉くんは馬鹿にしない。アイドルに本気で向き合ってくれるんだっていうのが嬉しかった。

 

 

 ただ、れおくんの良い噂をあまり聞かなかったのが正直気がかりだった。人懐っこいねこみたいな無邪気な笑顔でいつもステージに立つれおくんが、人を殴るとか、物を壊すとか、全然考えられないって思ってた。
 けど、実際にれおくんの作る曲は殺伐としていったし、ステージで笑わなくなった。
 泉くんも常に殺気立っているように見えた。もちろん泉くんはプロだから、ファンとの交流の場ではそんな素振り見せなかったし、ステージ上でもちゃんと笑ってた。けど、なんか怖いなって漠然と思ってた。

 


 それからまもなくして、れおくんが姿を消した。停学になったとか、休学してるだけとか、ネット上ではいろんな憶測が飛び交っていた。

 「私が好きになったKnightsはもうなくなっちゃうのかな。泉くんも一緒にアイドルやめちゃったらどうしよう?」って当時の私は毎日泣いてた。

 

 

 泉くんは夢ノ咲に入る前はモデルをしていた。私は当時のことをリアルタイムで知っているわけではないけれど、なるくんやトリスタの遊木くん辺りとよく同じ雑誌に載ってたらしい。
 正直モデルとしてはそこまでって感じだったと聞いてて。元々キッズモデルとしてやってたみたいだけど、年齢重ねて上手く方向転換出来なかったっぽいのかな。まあ泉くん身長ないし仕方ないかな〜ってのはちょっと思ってた。
 泉くんのアンチは、モデルが上手くいかなかったからアイドルに逃げたんだってよく掲示板に書いてた。けど私はそうじゃないって思ってた。泉くんはモデルから逃げて渋々アイドルをやってるんじゃなくて、モデルよりもアイドルの方がずっと楽しいからアイドルを選んでくれたんだって。
 けど、れおくんがいなくなって、アイドルとして上手くいかなくなった泉くんは、もしかしたらアイドルからも逃げるんじゃないの?って、疑ってしまったことは否定できない。

 

 

 それからしばらくして、Knightsは4人になってた。
 なるくんはモデル時代からの泉くんの後輩だったし、たまに一緒にステージに立っていたから知ってた。
 それから凛月くん。こちらもKnights現場でたまに見かけてたけど、正直朔間零の弟らしいってことくらいしか知らなかった。
 そして、新入生のかさくん。正統派アイドル〜って感じで普通に好みだなあって思ってたけど、ダンスとか歌とかまだまだって感じだったから、もしかしたらすぐ辞めちゃうかも〜とか思ってた。かさくんごめん。泉くん自分が努力する人だから他人にも結構厳しくて、かさくんめっちゃ怒られてるんだろうなって思ってたから……。
 鬼気迫る泉くんを怖く思うこともあったけど、アイドルをやめそうとかそういう不安はなかった。

 

 

 けど、そのあとKnightsは干され気味になった。ライブの仕事を全然しなくなって、代わりにボランティアみたいなイベントが増えた。歌って踊る泉くんが好きだったから不満があったけど、曲作ってるれおくんが活動出来ないから仕方ないのかなって思ってた。外注すればいいのにそれをしないってことは、まだれおくんのこと待ってるって思っていいんだよねって無理矢理納得してた。

 

 けど、夏頃には徐々にライブの仕事も増えてきた。曲はれおくんの既存曲ばかりだったから、それなら春もライブ出来たじゃんとか思って、Knightsが何をしたいのかよく分かんなくなった。けどなんとなく、もうれおくんは戻って来ないんだろうなって思っていた。れおくんが海外で仕事始めたらしいって月永担から聞いて、なんとなく腑に落ちた。

 

 

 秋になって、れおくんが戻ってきた。もちろん嬉しかったけど、やっぱりよくわかんないって気持ちの方が強かった。れおくんはライブに出たり出なかったりまちまちで、あの頃の月永担ほんとにしんどそうだった。こんな風にファンを苦しめるれおくんは、Knightsにふさわしくないんじゃない?って思うこともあった。
 だけど、泉くんの雰囲気がすごく丸くなったのもこの頃だった。やっぱりれおくんといるときの泉くんがいちばん楽しそうでキラキラしてて、泉くんにはれおくんが必要なんだと思った。
 れおくんがどうして姿を消していたのかよくわからないし、私がKnightsを好きになった頃のれおくんとは別人みたいだし、メンバーがどこかれおくんに気を遣ってるっぽいのが見てて痛々しく思うときもあったけど、でもれおくんが王様じゃなきゃKnightsはKnightsじゃないんだろうなって思ったら全部どうでも良くなった。
 スタフェスで見た5人はあったかくて楽しそうで、もうこの人たちなら絶対に大丈夫だって確信した。
 


 この頃から卒業というワードが他ユニのオタクからチラチラ漏れ聞こえてきていた。凛月くんの兄である朔間零がアイドル辞めるかもとか、流星隊は守沢くんがいないとまとまらないのにどうなるのとか。らびのなずなくんも進学するから辞めそうとか。絶対ないんだけど、fineが解散するかもなんて噂もあったなあ。
 Knightsはそういう噂とは無縁だった。どこのオタクも大変そうだなあと思いつつ、Knightsはそういう苦しい季節は乗り越えたから関係ないんだって思ってた。

 

 

 2月下旬。泉くんがフィレンツェに行くと発表した。世界進出して、モデルとしての腕を試したいんだと。
 嘘だと思った。だって泉くんは、モデルよりもアイドルを選んでくれたって思ってたから。
 私が大好きなアイドルというものに真摯に向き合ってくれる泉くんが好きだったのに、結局泉くんもアイドルをバカにするの?って悲しくなった。
 アイドルはお遊びで、モデルは高尚な仕事なの? モデルとしてやっていくための足掛かりとしてのアイドルだった?Knightsはどうするの?辞めちゃうの?モデルやるにしても海外じゃなきゃだめ?日本はレベルが低くて話にならない?
 これまでも泉くんが分からなくなることはいっぱいあった。けど、泉くんがアイドルを愛してることだけは信じられた。
 だけどフィレンツェの発表を聞いてから、もう泉くんのことが何も分からなくなってしまった。瀬名泉って、一体誰なんだろう。

 

 

 私が疑心暗鬼になっていたからそういう話題が目につきやすかったのか、ちょうどそういう時期だったのかは分からないけど、れおくんがアイドル辞めるかもという噂も出てきた。最近のれおくんは秋頃に比べたらずっと楽しそうだからこれからもKnightsとして活動するんだって思っていたけど、思い返せば無理をしていたような気もした。ライブに出たり出なかったりするのも、体調の問題だったのかもと思うようになった。
 かさくんは実家がお金持ちで有名だけど、家を継ぐっぽいという噂もあった。Knightsは解散する方向で話が進んでるのかな……と私は毎日不安だった。

 

 

 正直泉くんのファンを続けられる自信がなかった。それでもホワイトデーに予定されてる返礼祭のチケットはもう取ってあったから、これが最後になるかもと思いつつ、ちゃんと泉くんをこの目で見てからファンを辞めるかどうかは決めようと思った。

 

 

 返礼祭は凛月担の友人と一緒に入った。ライブの演出が毎回変わるのが面白くて新鮮で、Knightsはまだ死んでないんじゃない?って期待に胸が躍った。
 一方で、一緒にいた凛月担の友人はずっと不安そうにしていた。いつものKnightsじゃないって。凛月くんが凛月くんじゃないみたいって。言われてみれば確かに、凛月くんはずいぶんと余裕がなさそうだった。


 返礼祭は前半戦と後半戦に分かれていて、後半戦が始まった時点ですでに20時を回っていた。この段階で今日は帰れなさそうだと察して、ヤコバをキャンセルして夢ノ咲からギリ徒歩圏内のビジホを押さえた。


 後半戦では、泉くんがメンバーそれぞれに自分の思いを伝える場面があった。卒業の挨拶みたいだった。かさくんを可愛がってることも、なるくんをライバルみたいに思ってることも、凛月くんを友達だって言い切ったことも、全部宝物みたいに嬉しかった。やっぱり私はKnightsが大好きで、この瞬間が永遠に続いてほしかった。
 そのあと、れおくんの口から「王さまをやめたかった」という言葉が出た。あぁ、やっぱりれおくんはKnightsをやめるんだ、と息を飲んだ。
 Knightsはなくならない。リーダーをかさくんにして再始動する。けれど、そのKnightsはもう、私が好きになったKnightsとは完全に別物になる。れおくんも泉くんもいないKnightsになってしまう。
 呆然としすぎて何も考えられなくて、そのあとのことは全然覚えてない。ただずっと、夢だったら良かったのに……って思ってた。フィレンツェに行くなんて嘘だと言ってよ。
 結局、1年生のかさくんになだめられてれおくんはKnightsを続けることになった。でも泉くんはフィレンツェに行ってしまう。Knightsをやめるわけではなさそうだったし、なんか円満な雰囲気で終わったけど、泉くんがアイドルよりもモデルを選んだ事実は最後まで変わらなかった。

 
 会場を出た時には0時を回っていてさすがにちょっと面白くなってしまった。3月と言っても冬の深夜はひたすら風が冷たくて、ビジホにたどり着くまではただただ全身が痛くて辛かった。
 泉くんのファンを、この日限りで辞めようと決意した。

 

 

 今日、フィレンツェではKnightsの卒業ライブが行われている。戴冠式を行って、新生Knightsとして生まれ変わるのだ。
 この2年間、Knightsの現場にはほとんど全部通ってきた。初めて、行かないことを選択した現場になった。
 泉くんがライブしてるのに家でこうしてブログ書いてるなんて、数ヶ月前の私じゃ考えられなかったなあ(笑)

 


 瀬名泉くん。
 この2年間、本当に楽しかったです。
 フィレンツェでも元気でね。泉くんならきっと、世界一のモデルになれるよ。誰よりも努力家の泉くんなら、絶対大丈夫。
 私は泉くんの夢を応援できないだめなファンでした。こんなにいっぱい幸せもらってきたのに、最後に裏切るみたいになっちゃってごめんね。
 アイドルの瀬名泉くんが世界でいちばん大好きでした。